リトルナイトメア2にたいする自閉的考察

2021年2月10日、Little Nightmares Ⅱというゲームがリリースされた。僕は前作Little Nightmaresを、大好きなトシゾーさんが実況してたので観て(他の実況者のも一通り観たから言うけどトシゾーさんの以外観なくていい、人の心が無いので)、それは甚く感動して、友達にもやらせて実況させて、自分でやったこともないのにTinderで「好きな芸術作品を三つ挙げて」と言われたとき含めたくらいには思い入れがあるのだが、今回2が出たのでね、やっていきたいと思います。やりました。あのねえ、まず僕はアクションゲームの下手クソさで慶應に入ったんですね。たぶん6時間前後でクリアするモンなんですけど10時間かかりましたMacのキーボードって絶対に身体の一部にならないように設計されていて(言訳)、もはや自分でやるよりひとのやるのを鑑賞していた方が体験値が高いのではないかというくらいで、今回もプラス実況者と友達の実況でもみてみて、思うところあったので書き留めとこう何故なら物語に「思うところある」のはかなり珍しいので

 

鑑賞済みか一生鑑賞しないとインターネットの神様に誓える人しかこれ以上スクロールしないでと一応書いておきますね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは。

インターネットの神様です。

あなたはいま、

かけがえのない体験可能性をひとつ、

永劫に捨てようとしています。

大丈夫、

このページはいつまでも、

あなたを待っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・シックスは何故手を離したか

このゲームの明確なオチは主人公モノがシックスに捨てられるとこなわけだけど、僕の観た人たちはそんな仕打ち予想だにしていなかったという素っ頓狂な声で「えっ」とか「なんで!?」とか不満げに困惑していることに僕は困惑している。オルゴール壊したからに決まってんだろ。あそこで逡巡しない人間、何?怖いんだよね、だって絶対大事そうに抱きかかえてるじゃないの、出会ったときもずっと回してたじゃないの、檻に閉じ込められてきっと𝍸𝍸𝍸𝍸𝍸日も𝍸𝍸𝍸𝍸𝍸𝍸𝍸日も回し続けてたんだよ自分の存在が誰かに気づかれるようただ祈りながら。3日目以降は即身仏になるまで鈴を鳴らすほうの営みに入ってただろうね。単純な運動を脳死で(終わることを考えずに)ただ繰り返してるときのあの精神状態に思い馳せて?毎分ループするその一曲はシックスのいのちそのものになってたはずだよ。

で、最終章で登る電波発信源のビル(以下ドコモタワー)のなかはシックスの精神世界だった、というのはさすがに異論なかろう。重力がなく、非ユークリッド空間であって、臓器的な素材でできている(ことが露見する)。遷移にシックスの精神的心音であるオルゴールの音色を頼るシステムはそこまでやってたゲームから全く逸脱してて僕はあそこだけ5億分詰まって攻略を見ちゃったよ。シックスが肥大化してグニャグニャになってんのは自意識だから。これまで何度も助けてくれて心を通わせていたモノがそこに素の物理で入ってきても(ゲームを通して他者的存在たちがアレルギーかのように異物を攻撃するのと好対照に)呼びかけに応えるくらいには受け入れてくれたよね。

そ れ な の に (泣 (泣  トイザらスの拍で

モノはそのオルゴールを壊す(ようゲームに強いられる)。それはもう執拗に。冷静な世界(あれはモノの精神世界なのか。だとしたら冷えすぎている、怖い)から何度も戻る強い意志で。

オルゴールの停止とともに崩壊し始める精神世界のなかで、物理に戻ったシックスは数秒、初めてまっすぐと強く屹立し、モノを見据える。これが裏切られた怒り;敵意よりほかにどう感ぜられよう。とにかく崩壊を免れるために先陣を切るが、振り返って手を差し伸べたのは良心の残滓の反射なのか、それとも、この崩壊がまだシックスの精神の支配下にあったのだとしたら、最もつよい仕方でモノを裏切り返す悪意だったまである。(ゲームデザイナーの。)

 

七つの大罪との関係

思えば前作、前作のネタバレもしますけど、"シックス"は七つの大罪の6th、すなわち暴食の顕現だろうという正解すぎる設定考察があった。それに倣うとき"モノ"は1、つまり傲慢である。前作のシックスと違い、特段の情動描写のないまま院長やテレビっ子たちを処理してきたモノ。偶然助けただけの女の子をトランポリン扱いし、最後は自己の目的のために精神の核を躊躇なく破壊し尽くすモノ。っていうかプレイヤーの俺等。傲慢ではあるのかな。

【傲慢】思い上がって横柄なこと。人を見下して礼を欠くこと。また、そのさま。不遜。

いや日本語はどうでもいいわ。七つの大罪の元ネタ、キリスト教におけるPrideを調べよう。

Pride is excessive belief in one's own abilities, that interferes with the individual's recognition of the grace of God. It has been called the sin from which all others arise.

天恵を妨げる自己への過信でありすべての元凶とのこと。旧約聖書には Pride goes before a fall(傲慢は落下に先立つ;傲る者は久しからず)という箴言があり、まさにこのゲームのオチそのもの。聖アウグスティヌスの警句 "It was Pride that changed angels into devils" も思い当たる節がタコ焼きの上で踊る。ちなみに悪魔ではルシファー、動物ではフクロウやコウモリがこの罪に対応しているとかで、モノおよびシンマン(脚長テレビおじさん;成長したモノ)のキャラデザも言われればそんな雰囲気。全体的にバーナム効果で片付けるには惜しいものがある。よね?

 

リトルナイトメア2は他人を壊す傲慢さについてのお話である───この感情的仮説(というより仮説的感情)を軸にするなら、肉はどう付くんだろ

 

・なぜモノはシンマンになるのか

いまサッとググると日本語圏では「この世界はループしている。それを断ち切るためにシックスはモノを捨てた」という説が一強なようだけど、ちょっとよくわからない。モノを捨てなければネクストシンマンは発生しないんだからループせんやろがい。捨てたとしても真エンドの追加映像(時系列的に前作へつながる陰のシックス誕生の瞬間。精神世界の出口のテレビのペアから現実に戻ったとき、友達と精神世界を同時に失った寂しさと空っぽさに過食がトリガーされた、というのは良い説明だろう)から前作の旅が始まるんだからループせんやろがい。

モノはシンマンの姿になったけど同一人物というわけではなくて、精神世界に閉じ込められて罰を受けたすえ同じ姿になってしまった;傲慢さによって、憎んでいた化け物に自らがなってしまったという社会的寓話を落とし所にした、てなあたりで自然ではなかろうか。

いや罰を受けたってのは[誰によって?]だな。きっとモノも納得はできてないんだよね。ドコモタワー深部の内臓のなかで、あの椅子はかりそめの王座のようだった。やがて内臓はモノの部屋になり、町はモノの王国になっただろう。喪失と自尊を拗らせた成れの果てがシンマン(thin man;固有名詞でない)であり、

終わりのない旅を続けている。荒廃した世界で影の中を行き、何かを見つけるために。(公式キャラ紹介より)

という運命なんだ。リトルナイトメア2で描かれた時間は、幼い2人の運命を引き裂いた、悲しい原体験なんだねえ

 

・なぜドコモタワーがシックスの精神世界だったか

チャプター4では、町人たちが現実を放棄してテレビに洗脳されているようだった。(ところで画面に齧り付いている町人たちを嗤うとき俺等も画面に齧り付いているわけで、画面の中から汚染されてボトボト死ぬ人は現実にもいるわけで、思えば本筋に関係なさそうなチャプター2、3も、無脳の精神的野蛮さを放置して形だけの勉強を教え続ける先生しかり、現実に生きてはいないお人形;フィギュアをお世話し続けるデブおじさんしかり、現代社会を射程に入れた訓戒のようにも解釈できるよねぇ。)怪電波の発信源であるところのドコモタワー内部の少なくとも一部には囚われたシックスの精神空間が広がっていたから、この建物は人の精神性を内蔵もとい内臓する箱のようなものであるはずだ。明確にドコモタワーの外観→内に入っていくカットが無かったのは気になったが、異種の空間の境界の描写を避けたのか。エントランスには幾つもの扉があり、正面の扉からは入れなかった演出も気になる。もしかするとシックス以外にもシンマンの集めた幼児が何人も内臓されていて(シックスが吸われる前から世界の各所に子供のファントム;収集要素である電磁の幻影は点在していた)、彼女らの無垢な精神性みたいなのを吸収して電波に乗せているのかとか思ったが正直謎が多い。ドコモタワーの業態がわかればモノがどうしてオルゴール;シックスを壊したか、壊さなければならなかったかも推察できるかもしれない。前作同様ならDLCでそこそこ量の設定が明らかになるはずだから、とりあえずそれやら/観てから考えるべきなんだよな。そもそも。

やってから追記するわ

 

追記

DLC無えじゃねえか